• バス停。帰りのバスを待つ。前にここに来た時もそうだったが、ここの思い出は誰と絡んだ事でもなく、バス停の向かいの木だ。涼しい。スーツ着ててもそないには暑くない。魂の抜け殻のような目をして木を見つめる。風が吹く。わあっ、と、葉がざわめく。嘲笑の拍手にしか見えない。俺は所詮、そんなもんだ。昨日の長電話の所為で携帯の電源はとっくに切れていた。音楽を聴く気にもなれない。大切なものを傷付けてまで、得られるものはありますか。いつもこう。いつだってそう。無神経に自分が踏み潰していった。何を、傲っていたのだ。アホ共の中、見下し。見下して見下して、終いにそのレベルに落ちていた。アホを見下してるうちが華だと中学の時に悟ったのも無駄だったようだ。当時の自分は賢明だ。今の私は、死んでいる。そんな死人を嘲笑うかの様に、木々は揺れ続けていた。
  • どうかしていたのは自分だ。俺は世界でも獲ったかのように調子に乗っていた。腐っている。毒を抜かなければならない。出来るだろうか。やるしかないだろう。
  • 彼女は昔の私と似ている。全身全霊で生きていた。敵を作る事も厭わず、ただひたすらに、純粋であり続けた。私は敵との戦いから逃げた。要するに、怖かったのだ。死んでいた。抜け殻のような暮らしを送っていた。それでも何とかなると思っていた。甘い。実に甘い。浅薄。逃げた私。戦い続けた彼女。尊いのは、明白だ。どうあがいても勝てない。俺は戦いから逃げた。迎合する事で敵ではないよ、と敵にアピールした。お前は、誰と戦うのだ。敵は何人いるのだ。そこまで自分を追い詰めて、更に逃げ道まで塞いで、それでも笑っていられるその凄まじさはなんだ。はなから逃げた俺には勝ち目は無い。完全に負けた。俺はしょーもなかったわ。